阿里山登山鉄道


  2005年末の休みを利用して、鉄道ファンとしては長年の夢のひとつであった阿里山登山鉄道(森林鐵路)に乗ってきました。標高30mの嘉義駅から2216mの阿里山駅まで、約2200m、距離にすると71.4kmを3時間45分かけてゆっくりと登っていきます。
  嘉義市は丁度北回帰線の真上に位置し、冬だと言うのに半袖で歩いている人がいるほどの暖かさ、駅前のオープンチェアで冷たい飲料を取りしばし休憩する。


  登山列車は嘉義駅の北端(台北寄り)にある、専用ホームに停まっていた。台湾の幹線・支線(台鐵)は日本のJRと同じ狭軌だが、登山鉄道はそれよりさらに狭い。動力車は最後尾のディーゼル機関車(次のPHOTO参照)で、写真に見える最前部の右側は運転席、左側の窓のない部分はなんとトイレである。列車は24〜27人乗りの客車4両で定員約100人を乗せて定刻におもむろに発車した。一番前が4号車で、運転手の横の窓から景色を見るのが最高であるが、偶然入手した切符が4号車であったため、素晴らしい景観を存分に堪能することができた。そういえば、自分が子供のころ、「将来なりたいもの」は電車の運転手だったことを思い出した。


  この列車を推進するのは最後尾のディーゼル、平均時速約20kmで、ループあり、スイッチバックありの急勾配をゆっくりと登っていきます。阿里山までは道路もあり、バスの方が短時間でいけるのですが、登山鉄道は大変人気があり、特に週末は早くから手配しないと、切符を手に入れるのが難しいほどです。
  嘉義駅を出発して約1時間、竹崎駅を過ぎてしばらくすると、周りの植生が変わったことに気付く。標高が高くなり、熱帯林から亜熱帯林に変わったのだ。さらに、標高1500mを越えるころからは、見慣れた温帯林になる。数時間のうちに植生が見る見る変わっていく様子は植物学者でなくても、はっきり分かり、変化を楽しむことができた。
  途中の駅で、突然50人ほどのお客が乗り込んできて、通路まで一杯になった。ところがそのほとんどが次の駅で降りてしまったのにはびっくりした。あとで聞いてみたら、バスで阿里山に行く観光ツアーの中で、一駅だけ登山電車を経験するツアーがあり、大部分はそのお客だとのことで納得した。


  13:30に嘉義を出た登山列車は17時少し過ぎに阿里山に到着した。25℃の嘉義からくると10℃の山頂は大変涼しい。運よく日没に間に合うことができ、見事な夕陽を楽しむことができた。
  同行した家族、従姉妹の家族と山地料理の夕食を楽しみ、翌朝の日の出鑑賞に備えて早寝をする。


  翌朝は4時過ぎに起床してご来光を見に行く。
  阿里山の日の出は、昨日乗ったのとは別の登山列車に約30分乗り、「祝山」と言う山頂で拝むのが定番となっている。この路線は切符にも書いてあるとおり、日出鑑賞専用に近く、朝4時過ぎから8時頃までお客の数によって数便運行するだけである。


  クリスマス休暇の日曜の朝と言うこともあり、山頂は人で一杯であった。寒がりの台湾人はみなさん重武装で乗り込んできている。足元には雲海が広がり、美しいが、運の悪いことに、上空も曇天で、残念ながらついに太陽を拝むことなく明るくなってしまった。


  明るくなって、展望台から祝山駅に戻る。少し高いところから駅を写した写真を見ると、まるでおもちゃの鉄道のように見える。列車は行きも帰りも3本でたがいずれも満員であった。


  ホテルに帰り朝食を済ませてから、午後の列車まで森林浴を楽しむ。遊歩道はきれいに整備されており、写真にあるように、見事な檜や杉林の中の歩いていると、随所に風変わりな木や、季節はずれのツツジが咲いていたり存分に楽しむことができた。



  左の写真にあるのは「龍頭木」。良く見ると確かに龍の頭に見える。


  右の写真は「四姉妹」と名付けられていたが、ひとつの切り株の上から4本の木が生えていた。ユーモラスな名前をつけたものだ。


  少し開けた日当たりの良い場所に、季節はずれのツツジが咲いていた。梅も桜もまだなのに、なぜ? と不思議に思った。


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Michihiko Tanaka
田中三千彦(E-Mail:tanakam@leto.eonet.ne.jp)
初版 2006-01-12